株式会社アイティー

エピソード

EPISODE4 「携帯の電源が入っていないようなんです」

そう言ってお店に入られたお客様は白杖を携えてご来店されました。普段から操作のご案内やアクセサリーの販売などでご来店頂き、私自身も対応させていただく事がありますが、その日はいつもとは何か違う焦った声色から、とても不安な様子がうかがえました。。

EPISODE4/「携帯の電源が入っていないようなんです」

いつも私たちは目で得られる情報をもとに、毎日のようにスマートフォンを使っています。それでも操作にとまどうことも多々ある中で、そのお客様は耳からの情報だけをもとにいつもご利用されていらっしゃるのです。
これだけ毎日スマートフォンの案内を色んなお客様へ行っているのに、音声機能をつかった操作というのはショップスタッフである私達でさえ、簡単なものではありません。いつもならすぐに伝えることができるご案内にお時間を要してしまったりと、私自身戸惑いながらのご案内なってしまいました。しかし、お客様は最後まで耳を傾けて下さり、「ありがとう」とお礼を言ってくださいました。ここは何とかお客様のお力になりたいと思いました

EPISODE4/「携帯の電源が入っていないようなんです」

「お電話機をみせていただけませんか?少し操作をさせていただきますね」
そう伝えてお預かりしたお電話機は確かに、画面が真っ暗で電源が入っていないように感じました。修理や交換でお預かりになると、目で見て得た情報からスマートフォンを扱う私たちでさえ、大変と感じるお手続きになってしまいます。ましてや慣れていない代わりのお電話機をお貸出しすると今以上にご不便になることでしょう。
なんとか設定だけで改善しますように、一度電源を立ち上げ直しすれば改善しますように・・・そう祈るような気持ちで電源ボタンを押してみましたが、改善されません。

EPISODE4/「携帯の電源が入っていないようなんです」

そこで、店舗向けの電話サポートの方に相談をしながら改善方法を探ることにしました。いっこうに明るくならないディスプレイを前に、焦る気持ちが先走ります。暗いままのディスプレイを闇雲にさわっていると、ほんの少しではありますが、小さく音がきこえました。それはいつも設定してある、音声機能を用いて操作をするときの声でした。
画面が真っ暗になっているだけで、電源が入らないわけではない、故障しているわけではない。それなら、この機能を使って真っ暗な画面設定を変更すればいいんだ・・・それがわかったとき、目の前がパッと明るくなったように感じました。

EPISODE4/「携帯の電源が入っていないようなんです」

ただ、ここからが大変でした。画面が明るくても戸惑い、使い慣れていない音声機能を使った操作に苦戦したのです。
「最悪治らないと修理しか方法がございません・・・」サポートの担当の方から言われた言葉が脳裏をかすめます。
どうしよう、どうしよう・・・そんな不安な気持ちが募りました。
時間のかかる操作に、お客様に不安をあたえないようにできるだけ明るく声をかけ、少し時間をいただけないかお伺いしました。
まわりのスタッフの力もかりて、何度も何度も操作を繰り返すとようやく、ディスプレイの明るさを調整する設定項目までたどり着いたのです。
よかった・・・本当にただただそう感じました。
目がみえないといっても光だけは感じ取れると話すお客様に、明るく光るスマートフォンを手渡すと「本当にありがとう」と感謝の言葉をいただきました。
この一件から、私はお客様の気持ちがわかるようにと、私用のスマートフォンに音声機能をつけてみましたが、まったくもって使うことができませんでした。
でもそのお客様はいつもこうお話しされます。
「私なんてまだまだです。友人にはこの機能をもっと使いこなしている人もいるんですよ」と。

EPISODE4/「携帯の電源が入っていないようなんです」

使い慣れたスマートフォンも、違う環境から使おうとすると途端に難しいものになる。
その環境に立ってみないとわからないことはあると思います。でもそこに歩みよることはできる。私たちが普段扱う、スマートフォンは別の視点から物事をみるために必要な知識を教えてくれる、懸け橋になると思います。

いろいろな視点から考え、親身に対応させていただくことで、お客様のお力になれること身をもって体感しました。
今後もどんな問い合わせにも対応できるように、スマートフォンを扱うプロである私たちだからこそできる方法で、お客様のために力を尽くしたいと思っております。